2018年8月22日(水)、第3回基礎力養成講座を行いました。

 メインレクチャーは理学部地球科学科、木村浩之先生の「海底堆積物からの贈り物、メタン!〜地球科学と微生物の融合研究からエネルギー生産、防災対策まで〜」。西南日本の太平洋側の地下には付加体という厚い堆積層があり、深部では温水とメタンが蓄えられています。メタンは微生物によって生成されますが、その最適な条件や、温泉とともに採取されるメタンや水素を用いた分散型エネルギーによる発電の仕組みなどを学びました。講義後に数人の受講生から、付加体の構造は地域によって異なるのか、メタンは無限に生成できるかなど、多くの質問があり、地産地消型エネルギーへの関心の高さがうかがえました。

 午後の瓜谷委員長によるサブレクチャー「研究結果の取扱い(倫理)」は、科学者・技術者はどう見られているか、信頼されているか、研究における不正行為とはどのようなことかなど、質問形式で進められました。FSSの研究を行うに当たり研究倫理の講義は必須です。また、不正を起こさないための研究(実験)ノートの使用についても学びました。

 第1期発展コース生14名の中間発表を入校式に行う予定でしたが、台風で中止になったため、この日、都合のつく8人のポスター発表を行いました。3月以降、他の研究会での発表や海外研修を経験した英語発表もあり、それぞれ研究の内容も深化し、発表態度にも自信が見られ、成長の跡が感じられました。2期生からは個々の発表について感想が寄せられました。

 その後、前回の課題であった研究提案書再提出に対して担当の三浦有紀子先生から評価とアドバイスが返却されました。

 終了後に、Aタイプ(自己推薦型)の受講生は研究計画書に基づき、指導予定の先生と面談を行いました。

木村浩之先生の講義

木村浩之先生の講義を聴く受講生

瓜谷眞裕先生のサブレクチャー

発展コース受講生のポスター発表

発展コース受講生のポスター発表

<受講生の感想など(ニュースレター掲載分を含む)>

【発展コース中間発表・研究テーマ】
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1. Behavior of pill bugs: preference of light and humidity
2. ストレスが種子発芽や初期成長に与える影響について
 (温度および浸透圧によるストレス)
3. ストレスが種子発芽や初期成長に与える影響について
 (温度および浸透圧によるストレス)
4. Emergence behavior of cicadas in Shizuoka city
5. シリコン系ナノシート束を用いた新規熱電変換材料の開発
6. 長波長バンド間遷移カスケードレーザに向けたPbTe/PbSnTe/CaTeタイプII量子井戸の研究
7. 麻機遊水地におけるミドリムシの分布と生息環境から考える培養方法の検討
8. BR反応における新しい振動の発見
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【発展コース中間発表に関する受講生の感想】

 無駄になってしまっている熱エネルギーを生かそうとする考えが良いと思いました。また、安全性を求めたシリコンを使っているところが独創的だと思いました。
(焼津中央高等学校 Y.M.)

 6300匹のセミを調べたと聞いて、多くのデータが示す傾向はとても説得力があると感じた。色を効果的に用いたグラフは見やすかった。
(横浜市立南高等学校 R.K.)

 ダンゴムシは、目があまりよく見えないこと、体から水分とれているなど、いろいろな事が分かり興味深かったです。
(加藤学園高等学校 H.K.)

 材料を数種類用いていたので、結果の違いが分かりやすかったです。また、温度と浸透圧から受ける影響についての結果をグラフを使っていたため、材料によって受ける影響の差が分かりやすく良かったです。 観察で温度についての文章に、浸透圧と同じように「何を考えたか」についてを付け加えると、考察としてもっと良くなると思います。
(愛知総合工科高等学校 I.K.)

 種子は、さまざまな要因で発芽しにくくなることを知った。私自身も、自由研究で塩害が植物に与える影響について、調べているので参考になった。
(浜松日体高等学校 R.S.)

 長年の研究流石だと思いました。セミの幼虫の採取の時間はいつやったのか、またどのくらいの規模でやったのか気になりました。
(静岡サレジオ高等学校 S.M.)

 今の社会問題や技術課題に基づいてテーマを設定していて、実現すれば社会に役立つ研究だと強く思った。今後の展望がはっきりしていて、こういった分かり易い研究のストーリーづくりを私も心掛けたい。
(横浜市立南高等学校 R.K.)

 先行研究が無いというので全てが未知となり、室内でも利用できるというカスケードレーザーは考えられていて、とても面白いと思いました。
(焼津中央高等学校 T.H.)

 タブレットの動画やアニメーションを用いながら説明していたため、とても具体的なイメージがしやすかったです。
(加藤学園暁秀高等学校 K.M.)

 まとめ方が上手く、取った場所によって形質がちがうというのが面白かった。ミドリムシの体の仕組は、全く知らなかったので、知れてよかった。光を感じることがあるというのが驚いた。
(静岡農業高等学校 Y.M.)

<受講生の感想など(ニュースレター掲載分を含む)>

 温泉・メタン・水素などそれぞれについては知っていても、目的の温泉だけに集中して、メタンなど副産 物にはなかなか気が付かない。きっと私たちの日常生活の中にも、見逃していることがたくさんあるのだと思う。
(応募型A・男子)

 今回紹介してくださった研究では、地球科学や微生物生態学、化学工学、防災学、地質学など様々な分野の知識や技術を用いることで多くの新たな発見や気付きが生まれていた。
(応募型A・女子)

 農業高校生として農業にもメタンが利用されているというところに興味を持ちました。ビニールハウスの温度を上げるための電気を担ってくれるというのは環境にもやさしく良いアイディアだと思いました。付加体が分布する太平洋沿岸は農業が盛んになっていて、ほかの場所でも自然に優しいエネルギーが発見されたらもっと農業が発展していくのではないかと考えました。
(応募型B・女子)

 現在高校で色々な教科を勉強しているが、このメタンと微生物を利用した発電を見て、将来的には教科の垣根を超えて研究することもあるとわかった。
(応募型C・男子)

 今、学校で学んでいる様々なことは、将来、教科の枠を越えて繋がって来ると思う。また、学校で学んでいること以外も、将来、意外なところで役にたったりすることがある。だから、今、日常生活で学んでいるすべてのことを大切にし、将来に生かしていきたいと思った。
(応募型C・女子)

 教授の自己紹介を聞いて、自分が今知っていたり、興味のあったりする分野で自分の科学的、学問的な視野をとどめてしまうことは、とても勿体ないことなのだと再確認できた。また、教授のおっしゃったように、そういったことにハッと気づかせてくれるような人や物事との出会いも大切にしていきたいと思った。自分も、中学時代は運動部だったが、高校で化学班に入部し、そこで今の仲間たちに出会い、さらには今こうしてFSSという自分にとってはじめての貴重な体験をしていることもあるため、これからも与えられた機会や人との出会いを大切にしていき、より広い視点で物事を捉え、考えていけるような人物に成長したい。
(応募型C・男子)