2018年10月28日(日)、第5回基礎力養成講座を行いました。

 メインレクチャーは農学部生物資源科学科・中塚貴司先生の「花の色のいろいろ」。普段何気なく見ている花には様々な花色が存在します。花色は、花の形や香りとともに、花を特徴付ける重要な要素の一つですが、多彩な花色は、花びらに蓄積している色素の種類や量の違いによって生み出されます。これらの植物色素の特徴や、植物が色素を作り出す仕組み、遺伝子組換え技術による新たな花色の作出について話を伺いました。講義後、白い花から色を作り出すほうが簡単か、人間の需要に応じて遺伝子組換え等によって色を作り出すことは自然への悪影響を生み出さないかなど多くの質問が寄せられるとともに、質疑応答から土壌細菌やバクテリアを用いた遺伝子組み換えなどの新たな話を伺うことができました。

 午後のワークショップは、前回のメインレクチャー「デジタルスタイリングデザイン」の内容を受けて、「○○の曲線やデザインは人類の生活や未来をどう変えるか」(○○は昆虫、動物、植物など)をテーマに行いました。グループごとの発表では、すでに用いられているものや新たなアイデア、動植物の機能に由来するもの、また、人間の生活において効率性や安全性への利用など様々な考えが出されました。英語討論は2回目であり、英語で発表するグループが増えたこと、英語発表の後の日本語での説明も交えて他の受講生に分かりやすく伝える工夫も見られました。

中塚貴司先生の講義

花色資料を観察する受講生

質疑応答

ワークショップ・グループ討論

ワークショップ・グループ発表

<受講生の感想など(ニュースレター掲載分を含む)>

 花は花粉を運ぶために虫や鳥などの動物を利用する。それぞれの動物には好みの花があるということだが,もし目の前にある花が普段蜜を吸っている一般的なものとは色や形が異なっていたら,その動物はどのような行動を取るだろうか。様々な形態の花を作る育種の技術は,虫や鳥の感覚器官,さらには行動についての研究に利用できるように思う。同じ花でも様々な形状や色の品種を用意し,それらに対する虫や鳥(具体的には蜂や蝶など)の反応を比較すれば,花のどこの部分の情報からその花であると識別しているのかが明らかになる。このように,花の育種は生物学の分野にも利用できると考えた。
(横浜市立南高等学校 R.K.)

 今回の講義を聞いて私が一番興味を持ったのは、花はミツバチなどの益虫を引き寄せる色合いをしているというところです。その上、引き寄せたい虫ごとにその色合いが違っていました。先生の見せてくれた画像では、人間が見ている花の姿と虫が見ている花の姿は全く違い、受粉してほしい真ん中の部分を目立たせるような色合いになっていて進化の過程で自然にできたものというところに感動しました。
 私自身、カエルの視覚について研究していて、実験の方法を考える際にどうしても人間の視点でみてしまいがちです。今回ミツバチは紫外線が見えている、虫ごとに好みの色があると知り、人間とはかなり違いがあるなと実感しました。もっとカエルの立場になって物事を考えられるようにしていきたいです。
 また、pHの話も興味深かったです。アントシアニンはブルーベリーのイメージが強く勝手に紫色の色素のことだと思っていました。しかし、pHが酸性で赤にアルカリ性で青に変化していてまるでリトマス試験紙のような性質に驚きました。ちょうど家にブルーベリーエキスが入った錠剤があったのでお湯に溶かして酢とキッチンハイター(アルカリ性)を入れて観察したところ大きく赤と青に変化しました。
(静岡農業高等学校 Y.M.)

 講義の中で特に印象に残ったのは、pHで色が変化する植物色素としてアントシアニンがあり、それは酸性で赤を、塩基性で青を示すが、アジサイに含まれているアントシアニンはアルミニウムイオンと結合していることによって、酸性で青を、塩基性で赤を示すということだ。
 私はこれを聞いて、アントシアニンはほかの金属イオンと結合した時には酸性状態で青くならないのか、疑問に思った。
 調べてみると、アルミニウムは根の成長を妨げる有害な物質であり、成長に影響が出ないようにするために液胞の中に溜めていること、アルミニウムイオンを無毒化するためにはアントシアニンのほかにクエン酸が必要だということ、アルミニウムのほかに植物に有害な金属にはカドミウム・銅などが、3価の金属イオンには鉄(Ⅲ)・マンガン(Ⅲ)などがあることが分かった。
 アルミニウムを無毒化するためにアントシアニン・アルミニウムイオン・クエン酸が結合することが、アントシアニンが酸性状態で青くなる原因であり、別の有害な金属を無毒化するためにその金属と結合すれば、アルミニウムイオンと結合した時とは異なる色味も出すことができるのではないだろうか、と考えた。
(浜松日体高校 R.S.)

 花の色は様々であり、それぞれがその環境において、生きやすいように進化しているというのは、カワセミの口の形が空気抵抗や、水への入水がしやすいように、良い形質だけが生き残った結果だと考えられる。そこに、自然としてそこにあった姿ではない色、形を作るための方法を今回の講義で学べた。まず、講義の中の交配に興味を持った。自分は交配を少しやっていて、思い通りの形質にするために、同じような形質の魚の交配を繰り返している。しかし、漠然とその形質に似ているもの同士を交配してもダメなように感じた。ある一つの品種を作り出すために、花では何回も交配、交雑を行なっていた。しっかりとどの形質を受け継ぐのかを考察しながら交配を続けていきたいと考えた。
(静岡市立高等学校 K.T.)

 私はこの講義を聞いて、青いバラにとても興味を持った。そしてバラには元々赤い色素があるので青の色素をいれても紫に似た色になってしまうということが分かった。また、白バラに青の色素をいれ、青の色素を作り出していくことは、 白バラが色素を作る働きを持っていないため、難しいということも知った。
 では、色素でなく細胞の形で青い色を作り出すことはできないのだろうかと、私は考えた。
生きた宝石とも言われている、ブルーモルフォバタフライという蝶がいる。その名の通り、この蝶は鮮やかな青い羽を持っている。しかし、青い色素を持っている訳ではない。このモルフォバタフライの鱗粉には超微細な格子状の溝が等間隔で多数刻まれている。その溝の側面には棚状の襞がついており、その働きで青の波長だけが反射し、私たちに青という色を認識させている。
 講義でも細胞の形で色が変わるというものが紹介されていた。このブルーモルフォバタフライの羽のような構造をバラの表面に作ることができれば、より青いバラを作ることは可能になるのではないだろうか。動物のDNAを植物にとり込み、その動物の特徴を植物に反映させるのは難しいと考えられている。よって蝶のDNAを加えて青バラを作ることはできないかもしれない。しかし、細胞の形を変え、その影で花に模様をつける技術があるので、細胞の形を変え、ブルーモルフォバタフライの羽に似た構造を作り、反射により青いバラを作り出すことはできるのではないだろうか。
より、美しく鮮やかな青いバラができることに期待したい。
(清水東高等学校 T.N.)