2022年9月11日(日)基礎力養成コース第3回メインレクチャー、サブレクチャーを行いました。

2022年9月11日(日)、第3回としてメインレクチャー、サブレクチャーを対面形式とリモート形式のハイブリッドで行いました。

メインレクチャーは、農学部応用生命科学科の平井浩文先生が「キノコが地球を救う!-バイオファイナリーとバイオレメディエーション-」というタイトルの講義を担当しました。菌類の仲間であるキノコは木材の構成物質を分解する能力を持ち、森林の生態系維持に重要な役割を担っています。木材は、骨組みとなるセルロースのまわりをリグニンという分解されにくい芳香族ポリマーで補強された構造になっています。平井先生は、このリグニンを分解できる唯一の微生物である白色腐朽菌に着目し、人間社会が抱えるエネルギー需要やカーボンニュートラルという問題の解決にキノコを利用できないかという研究に取り組んでいます。

低炭素循環型社会を構築する手段の1つとして穀物を使ったバイオ燃料の開発があります。しかし、これには食糧生産との競合という大きなリスクがありました。そこで、食糧にならない木質成分を分解できる白色腐朽菌が注目されました。この生物資源を原料に石油などの代替となる物質を製造する技術を「バイオリファイナリー」と言います。一方で、環境汚染物質の分解や無毒化にも白色腐朽菌が有用ではないかと考えられています。これは「バイオメディエーション」と言い、生物機能を利用した環境修復技術です。講義では白色腐朽菌を用いたバイオリファイナリー、バイオリメディエーションを、実例を挙げて説明して頂きました。

講義の終了後、受講生からは「バイオ燃料と太陽光発電はどちらが高効率か」「廃材や木材以外の植物の廃棄物を使うことができないか」などの質問が相次ぎました。受講生は、キノコの生物化学的な基礎研究とエネルギー生産や環境浄化という応用研究をつなぎ、社会の課題解決に役立てる視点を学ぶことができました。

サブレクチャーでは、静岡大学名誉教授 瓜谷眞裕先生が「研究提案書の作成法」を解説しました。受講生が12月以降の研究力養成コースに進むにあたり、早速研究に向けた準備に取り掛かることになります。その中で最も重要な作業が、実施可能な研究テーマを見つけ、計画を立てることです。受講生は、先行研究の文献調査を行い、研究の背景を調査します。自分の疑問、視点について、既に何がどこまで分かっているのか、何が分かっていないのか、なぜ明らかにすべきなのかを調べ、時間をかけて整理していきます。そして研究課題名、概要、背景、目的と方法、特色や独創的な点、成果の発信に関する方法や目標などを考えながら、研究提案書を作成していきます。

完成した研究提案書をFSS事務局に提出し、研究指導に当たる教員の候補を決定し、面談審査を経て研究が開始されます。「研究」とは答えが分かっていない自然現象、社会現象について原理や理論を明らかにしていく活動です。FSS受講生がどのように自由な発想でテーマを考えるかが楽しみなところです。

今回のサブレクチャーでは、研究提案書の説明にあわせて「研究成果の証明に役立つ研究記録ノート」が手渡されました。この研究記録ノートは、研究者自身の財産であり、知的財産権保護のための証拠資料にもなります。これまでのサブレクチャー「研究者倫理」「知的財産権」を踏まえ、瓜谷先生からは研究ノートの付け方や機能について解説がありました。

受講生はノートを手にすることで、いよいよ始まる大学での研究活動に期待と緊張を感じている様子でした。

メインレクチャーの開始を待つ受講生


平井浩文先生のメインレクチャー


質問も回を追うごとに活発になってきました


平井先生と受講生の質疑のやりとり


瓜谷眞裕先生のサブレクチャー


勉強と研究の違いについて意見交換をする受講生