2022年10月2日(日)基礎力養成コース第4回メインレクチャー、サブレクチャーを行いました。

2022年10月2日(日)は、オンライン形式で第4回のメインレクチャーとサブレクチャーを行いました。

メインレクチャーは、理学部地球科学科の三井雄太先生が担当しました。受講生は、あらかじめ静岡大学テレビジョンで公開されている動画「プレート境界地震の発生メカニズム-2011年東北地震後の進展-」を視聴しました。

地震学では、1920年代以降地震波を測定し解析することで地震が起こる仕組みを探ってきました。その結果、現在では常識のように捉えられている「地下の断層のずれから地震波が放射されたものが地震の正体である」ことが1963年に確定しました。これを境に、地震という現象の力学的な仕組みが明らかになっていきます。地震のメカニズムは、断層の破壊開始、破壊の伝播、破壊の停止という3つの過程に分けて捉えることができます。この中で、断層のずれ(せん断破壊)が、既にある断層をなぞるように高速で伝わるのが破壊の伝播です。さらに、破壊の伝播が地下の高温部分で岩石が少し柔らかくなったところで停止することも分かってきました。このように地震のメカニズムが少しずつ解明されてきたものの、断層の高速破壊が始まる前、つまり地震が発生する前にどんな現象が見られるかは、現在でも地震学の大きな論点です。「断層内流体」「ゆっくり変形」という物理過程については、2011年東北地震の後に進展が見られた研究でした。

サブレクチャーは、理学部地球科学科の生田領野先生が「理系の文章作成方法(パラグラフライティング)」というタイトルで講義を担当しました。

理系の研究レポートなどを書くとき、情報が明確に伝わり分かりやすい文章作成の技術が必要になります。それには読み手・聞き手の予測(メンタルモデル)に合わせて話を進めていくことが重要です。そのために用いるのが「パラグラフライティング」です。パラグラフライティングとは、文章全体をトピック(話題)毎に分け、1つの段落(パラグラフ)を1つのトピックに充てる文章構成のことです。今回のサブレクチャーでは、提示されたトピックから1つを選び、1つのパラグラフを書くトレーニングを行いました。

受講生は7名前後のグループに分かれ、Web上で miro というツールを使い、文章作成を行いました。選んだトピックについて、20分程度でトピック文と3文以上のサポート文(トピック文を補助する文)からなるパラグラフを1つ作成しました。受講生が作成中の文章は、miroの画面上で確認することができます。全員がパラグラフを書き上げた後、文章をお互いに紹介し、意見交換をし、グループ代表を一人選出しました。各グループの代表者は、受講者全体に自分が書いたパラグラフを紹介しました。

発表された文章に対して生田先生からは、「用語の定義を明確にすることで、文章が論理的になる。」「複数の文を同じスタイルで書き並べるパラレリズムという手法を使うと、一見異なる概念を対比し、共通性を見出すことができる。」というアドバイスがありました。受講生は本講座を通して、研究者・技術者にとって必要な簡潔、論理的で誤解を生じない文章の書き方を学ぶことができました。

三井先生の講義について質疑が始まる


1917年静岡地震の断層の動きに関する質問


生田先生のサブレクチャー グループワークの開始


グループ内で、お互いに作成したパラグラフの紹介をする


グループ内で、意見交換を行う


miroで作成したパラグラフを見ながら、チャット機能を使って意見交換をする

<参考>
木下是雄,理科系の作文技術,中央公論社,1981.
木下是雄・久間月慧太郎,まんがでわかる 理科系の作文技術,中央公論新社,2018.