2024年11月9日(土) 研究力発展コース 中間報告会を実施しました。
静岡大学未来の科学者養成スクール(FSS)の研究力発展コース(第3段階)受講生は、現在、静岡大学各学部の研究室で指導を受けながら、各自が設定したテーマに基づき研究を行っています。受講生からは、学会で発表したり、全国規模の科学研究コンクールで入賞を果たしたりと、様々な成果が報告されてくるようになりました。そこで、受講生がこれまでの自身の研究をまとめて振り返ることを促すとともに、FSSを運営する教職員が受講生の研究の進捗状況を把握する目的で、2024年11月9日(土)に、中間報告会をおこないました。
昨年11月ごろから受講生たちがFSSで研究を始めて、約1年間が経ちました。この間に得た研究成果を、10分間の口頭発表とスライドにまとめました。さらに、中間報告会の中では、FSSを運営する先生方からたくさんの質問を受け、それに答えていきました。研究力発展コースの受講生たちは、この報告会を通して研究の修正点を見つけたり、研究を進展させるための新たな課題に気づいたりと、残りの研究期間が5か月となる中で有効な情報を手に入れることができました。
受講生が現在取り組んでいる研究テーマは次の通りです。
【昆虫のタケノコへの誘引】
タケノコに誘引される昆虫について、その種類、数などを、季節やタケノコの処理方法を変えて比較し、誘引成分の特定を試みた。
【赤外線センサと決定木によるプラスチック廃棄物の自動分別】
廃棄プラスチックから得られる赤外線スペクトルをもとに、機械学習の手法を用いながら効率の良い分別システムの構築を試みた。
【プラナリアの再生能力と光の関係】
切断したプラナリアが再生する過程で可視光線を当て、再生速度を比較した。可視光線の波長によって、再生速度に差が生じるかを明らかにすることを試みた。
【カエルの皮膚に存在する間脳視床下部ホルモンの機能解明】
カエルの皮膚に存在する可能性のあるホルモンに着目し、変態とホルモン分泌および受容体発現の関係を明らかにすることを試みた。
【イヌの表情からイヌの感情を読み取る】
イヌとその飼い主が意思疎通をする感覚を科学的に解明することを試みた。ヒトの様々な感情を顔の表情で表現し、イヌの行動評価を行った。
【可視光通信に革命を起こせ!】
通常、通信には使われない可視光線に情報を載せ、電磁波の使用が制限されている場所でのネットワーク構築に関する問題解決を試みた。
【瀬戸川帯の付加体中に産する鉄丸石の微細構造観察】
静岡県安倍川流域に産出する鉄丸石の微細岩石構造を観察することにより、その形成過程におけるメカニズムを明らかにすることを試みた。
【一次共生の成立過程の解明】
シアノバクテリアが、真核生物であるミドリゾウリムシに捕食された後に起こる変化を明らかにすることで、バクテリアと真核生物が共生に至る過程の考察を試みた。
【カモノハシの頭蓋骨形態と雌雄差の関連性】
オーストラリアの一部地域に生息するカモノハシについて、頭蓋骨形態の生息地域ごとの雌雄差と生息環境との関連を見出すことを試みた。
【断頭三角柱の体積公式の断頭多角柱への応用 ~ 多角形の2つの重心に関する定理の発見 ~】
多角柱をある平面で切断して得られる立体を断頭多角柱と言う。断頭多角柱の体積を求めるとき、すでに確立されている断頭三角柱の公式の拡張が可能であることの証明を試みた。
【蒸気ロケットエンジンの有効性 ~ 水ロケットとの比較から考える ~】
水ロケットで物体を飛ばす原理を用い、容器内で水を高温に加熱して推力を得る「蒸気ロケットエンジン」の開発に取り組んだ。
【ナミアゲハ(Papilio xuthus)幼虫の先行研究を踏まえたSEM画像検証】
チョウ目昆虫の幼虫について、生息環境の影響が腹脚の形態的特徴に現れるのではないかとの仮説の下、ナミアゲハ幼虫の腹脚の観察と分析を試みた。
【疑似濃淡電池における反応機構の解明】
金属電極と、その金属とは異なる元素のイオンを含む電解質溶液からなる「疑似濃淡電池」において、特に正極での反応機構の解明を試みた。
以上の研究発表に対して、FSSの運営にあたる先生方が、それぞれの専門分野の立場から質問をしました。受講生たちはそれらの質問に答える中で、自分の研究の目標を再認識し、実験方法の改良や実験回数を増やし結果の信頼度を上げる必要性などに気づいていきました。研究力発展コースは来年3月末で終了となりますが、それまでの5ヶ月間にやるべきことを数多く見つけることができました。
報告された受講生の研究は、生活の中での思いつきをテーマにしたもの、中学校の時にやっていた研究を発展させたもの、高校の科学部で取り組んでいるテーマをもとにしたものなど、多様で個性豊かな内容でした。昨年11月に研究をスタートした時には全くの手探りの状態で、本当に研究として成立するのかと思われたテーマもありました。しかし配属された静岡大学の研究室の先生方や院生の皆さんが、研究論文の読み方、実験条件の設定の仕方、結果の解析の仕方などを指導していただき、研究としての形を整えることができました。今後、対外的な発表に挑戦していくことで、研究の質や発表のスキルを高めていくことが期待されます。
一方、今回の中間報告は海外派遣研修の選考会も兼ねていました。3月末のFSS研究力発展コースの研究発表を経てFSS全課程を修了する受講生の内、希望者をインドネシアに派遣する予定です。研究発表を通じた現地大学生との交流、インドネシアの産業の視察、生物や地学の現地視察などが計画されています。この海外派遣研修に派遣される受講生は、今回報告された研究の進捗状況の評価と、海外派遣に対する意気込みなどを記載して提出される「選抜調書」の評価を合わせて選出されます。この海外派遣研修を実り多いものとするためにも、現在行っている研究を、より一層充実させることが望まれます。