2025年2月16日(日) 研究力養成コース第2回講座として「海外大学生との交流②」を行いました。

 2025年2月16日(日)、静岡大学未来の科学者養成スクール(FSS)は基礎力養成コースの第2回講座としてワークショップ「海外大学生との交流②」を行いました。

 前回のワークショップで、3月9日に行うシンガポール国立大学(NUS)の大学生に向けた発表で地域のどのような困りごとを取り上げるかを話し合った受講生たちは、今回の講座までに自宅からリモートによる作業で発表に使うスライド資料を日本語で作成しました。各グループの発表テーマは次の通りです。

 グループⅠ:気候変動によるお茶への影響、環境に配慮した栽培 方法について
 グループⅡ:沼津港での魚の廃棄物処理とそれらによる異臭問題 について
 グループⅢ:リニアモーターカー鉄道敷設工事問題の解決法
 グループⅣ:ムクドリによる糞害とその対策
 グループⅤ:有害な雑草(ナガミヒナゲシ)への有効な対処法
 グループⅥ:駿府城のお堀の水が“見かけ上”汚いのをどうにかしたい

 今回の講座の前半は、事前に各グループが用意したプレゼンテーションを日本語で発表しました。後半は、静岡大学に通う外国人留学生がTAとして各グループに加わり、グループワークで発表内容の検討と英訳を行いました。高校生にとって当たり前と感じている地域の特色や課題を、外国人学生に説明してもすぐには伝わりません。自国の文化や地域産業の特色などを、言語や文化が異なる外国人学生がイメージできるように表現することが求められました。

前回の講座でテーマの候補を話し合った後、各グループはリモートによる作業で意見交換と資料作成を行いました。

 各グループは、調べた資料からグラフや表、写真などを引用しながら地域が抱える課題を発表しました。科学的な解決方法も、自分たちの関心の高い分野の知識を活かしながら様々なアイディアが提案されました。しかし、高校生たちの提案に対し、大学教員から次のような指摘がなされました。「実験室の中で可能だと考えられる対策を、社会の困りごとに適用しようとするとスケールが全く異なる。その対策に必要な人手や資材の量に関する視点が不足している。」「調べてきたことをそのまま並べるのではなく、自分たちが考えたアイディアを前面に出してほしい。」

グループIは、静岡の特産物である茶葉の生産の課題を取り上げました。気候変動や後継者不足に対して、品質や収穫量の維持の方法を提案しました。

グループIIは、漁業系廃棄物による異臭問題を取り上げました。解決策として、農業系廃棄物として出る蜜柑の果皮を使った対策を発表しました。

グループⅢでは、リニア建設で課題となっている河川の流量現象の懸念を取り上げました。生物由来の吸水性ポリマー用いた湧水の吸収による解決案が提案されました。

グループⅣは、都市中心街に集まるムクドリによる糞害を取り上げました。衝撃音や録音した鳴き声などの音を使った飛来数のコントロール方法が紹介されました。

グループⅤは、外来植物で雑草として繁殖しているナガミヒナゲシを取り上げました。植物内に含まれるアルカロイドによるアレルギーへの対策が紹介されました。

グループⅥは、静岡市中心部にある駿府城の堀の水の浄化を取り上げました。プランクトンの利用や水路の整備など、いくつかの解決策を提案しました。

 後半は、それぞれのグループに分かれ、発表資料を英訳する作業に取り掛かりました。この時、静岡大学に通う外国人留学生が各グループのTAとして、高校生たちに助言をしました。留学生の皆さんも母国語は英語ではありませんが、大学での研究活動では英語が公用語です。高校生たちの中にも英語が流暢に使える人はいますが、英語でのコミュニケーションに慣れていない人も多いという状況です。片言の日本語、片言の英語が飛び交う中で、高校生たちは自分たちが取り上げた課題の背景を改めて説明していました。

 グループ内での情報共有が一通り終わると、英語版のスライドを作成する作業に移りました。そもそも高校生が取り上げた課題のどこが問題なのか、生活する国が異なれば問題の捉え方も違います。同じ日本国内でも、地域の地理的な特徴や産業構造が違うことで、それぞれの地域では異なる問題が存在します。地域の環境や社会状況を理解するための資料、課題解決に使えそうな新しい技術の紹介などの資料を整えながら、それらを英語でどう表現するかを検討していきます。海外の人たちに向けて、高校生たちが討議した内容が正しく伝わるのか、自分たちが課題として取り上げた理由を海外の人たちが共感できるのか、これらを吟味することが、当日の議論が噛み合うか否かの分かれ目になります。高校生たちには、日本のローカルな社会課題を、グローバルな立場から俯瞰的に捉える視点が必要となります。

TAとして指導にあたる静岡大学の外国人留学生に、自班が取り上げた困り事のイメージを伝えることが大変な作業でした。

外国人留学生の視点を参考にしながら、自分たちの発表内容を再検討しました。

外国人留学生に、専門用語の英語表現などについてアドバイスをもらいながら英訳作業をしました。

 グループワークは90分で終わりましたが、シンガポール国立大学の学生に向けた発表を行う3月9日(日)まで、外国人留学生のTAも参加し、リモートで英訳の作業を続けます。Webサイトの教育用ツールを用い、グループ毎に割り振られたクラス毎に、作成したスライドや発表原稿の共有を行います。必要に応じてリモートでのミーティングを設け、内容について意見交換を行なっている様子も見られます。外国人TAは、日本語のスライドの英訳をチェックするだけでなく、プレゼンテーションで強調すべき点、スライドの取捨選択、参考文献など提案の元になる根拠の示し方など、研究者としての基本的なスキルをきめ細かく指導してくれています。積極的にコミュニケーションに参加する高校生にとっては、自分の英語を実践的に磨く貴重な場となっています。