2018年7月29日(日) 基礎力養成コースがスタートしました。
第2期生42名が選抜され7月29日、平成30年度の基礎力養成コースがスタートしました。当初7月28日入校式、29日第2回基礎力養成講座の予定でしたが、台風12号接近の影響で29日の1日に大変タイトな日程でFSSスタートに当たり必要最小限の内容で開催しました。
丹沢副学長あいさつにつづき、瓜谷委員長から研究の目的や心構え、学び方、研究の進め方について説明を受けたあと、三浦有紀子先生から研究力養成コースへ進むための「研究提案書の作成」のサブレクチャーを受け、研究の背景、目的、方法、課題名のつけ方などを学びました。また、受講生が事前に提出した研究提案書の下書きを三浦先生が添削し、アドバイスを入れたものをもとに、改めて8月6日までに完成度の高い研究提案書を提出します。
昼食時は8グループでアイスブレークおよび全員の自己紹介を行いました。午後は理学部化学科の近藤満先生の「金属錯体が創り出す新しい構造と機能」の講義です。金属錯体は金属イオンと有機化合物から構成される化合物で、それぞれ単体では見られなかった新しい性質や機能が発現します。まだ高校の「化学」を十分学んでいない受講生にとっては難しい内容であったかもしれませんが、講義終盤での塩化コバルト(CoCl2)と塩化アンモニウム(NH4Cl)の混合物の水溶液が温度変化により変色する実験では時間を忘れ夢中になっており、科学に関する好奇心の強さをうかがい知ることができました。この講義レポートは2週間の期限で提出します。
FSSのプログラムへBタイプ(自己推薦・自主研究推進型)およびCタイプ(学校推薦・連携活動型)へ応募した受講生は、基本的に研究課題が明確になっていることから、講義終了後に、研究力養成コースで指導予定の先生と面談を行いました。Aタイプ(自己推薦・一般型)の受講生は8月6日に提出する研究提案書をもとに先生方と面談をします。
<静大TV映像>
平成30年度未来の科学者養成スクール入校式ダイジェスト&サブレクチャー編
平成30年度未来の科学者養成スクールメインレクチャ-編
<受講生の感想など(ニュースレター掲載分を含む)>
金属元素はとても多くの種類があり、その組み合わせは幾多にも存在するとわたしは思う。そのため、新たな金属錯体を探ることや、その働き、応用方法を探る面で未知の部分も多く、様々な可能性を秘めていると考えられる。また金属錯体には電子の出入りが容易である、多様な色が出る、様々な構造をとる、磁性が多様であるなど、多くの性質がある。このようなことから、多面的な視点から研究ができ、新たな発見につながりやすいのではないかと思った。
(韮山高等学校 R.U.)
抗癌剤として利用されるメリットと、デメリットについて調べてみました。メリットは、全身への効果が期待できること、複数の抗がん剤を利用でき、そうすることで、副作用が強く出ることを防ぐことだけでなく、癌に対して様々な種類のアプローチをすることができます。また、放射線治療と組み合わせることもでき、治療実績を向上させることに成功しています。さらに手術や放射線治療では、原発巣を取り除いたつもりでいても、検査で確認することができない癌細胞が残ることがあります。これによる再発のリスクが生じてしまうのですが、手術や放射線治療の後に抗癌剤を利用することによって、再発のリスクを抑えることができます。
デメリットとして、シスプラチンは主に尿細管細胞を障害する腎毒性、延髄外側網様体に位置する嘔吐中枢が刺激されて発現する悪心、嘔吐。聴力低下、難聴、耳鳴りなどの聴器毒性、長期間にわたるシスプラチンの服用が原因で、体内にある抗体がシスプラチンと反応して溶血を引き起こすとされている溶血性貧血などがあります。これらのデメリットに対する対処法はありますが、完璧ではありません。
これらを調べ、癌治療の恐ろしさを実感しました。また、医療が患者に命を保証できるようになるのは程遠いと感じました。発見されていない金属錯体があり、それも医療に役立たせることができる可能性があると思うので、ぜひ人類の誰かが発見し、それを役立たせる方向へと導いてほしいです。私も、医療に関わり患者を安心させることができる医者になりたいと思いました。
(浜松学芸高等学校 Y.I.)
調べたことをもとに、CT遷移が起きるときとd-d遷移が起きるときで何が違うのか考えた。まず、d-d遷移よりもCT遷移のほうが光の吸収が強いことと関係があるのではないかと思い、この原因について考えてみた。光の吸収が強いということから、配位子の軌道と金属イオンの軌道のエネルギー差が大きいため、電子が吸収するエネルギー(光)も大きくなると考えた。しかし、そうすると電子が波長の極めて短い光を吸収するようになるため、金属錯体の色が無色になると思われる。よってこの考え方では説明は難しい。そこで、移動する電子の数がd-d遷移よりも多いためと考えた。これならCT遷移のほうが光の吸収が強いことを説明できる。また、配位子の電子が少ないエネルギーで移動できるような状態で、移動することのできる電子が多いときにCT遷移が起きると考えることもできるのではないかと思った。
(静岡高等学校 D.S.)
私はこの講義を聞くまで、金属錯体のことを聞いたことがなかった。しかし、この講義で金属錯体は組み合わせによっては場合によっては異なった、害を及ぼすものを生み出すこともあるが、味も変えずに人間に害を及ぼすものを効率的に取り除けるという。金属錯体のまだあまり効能が知られていないという未知の部分に私は引かれた。何千万という組み合わせがある中で、良い組み合わせを見つけるのは難しいことだ。数通りではなく、それほど多くあるからこそ逆に見つけようと思う上、見つけた時の達成感も大きいものとなるだろう。
この講義を聞き、身近なものに金属錯体の性質が使われているかと思い、調べてみると、スマートフォンの中や、一酸化炭素の作成、植物の光合成にも使われているそうだ。この研究がより進むと、大気中の二酸化炭素を削減するためにもつかわれるかもしれない。未だ解明されていないことも多い金属錯体。その研究がより発展していき、新しい物質をも作り出す日が来るのかもしれない。先入観にとらわれず、研究することで、金属錯体という宝の中から、宝がどんどん見つかりそうな気がする。私もメンバーの一員となり、宝探しをしたいなと考えた。
(静岡雙葉高等学校 A.N.)
私は過塩素酸イオンの機能について興味を持った。液体である水に溶け込む為、過塩素酸イオン入りの水を飲用すると有害物を体に取り込むと考え、悪い印象が多い。だが、このイオンのメリットして、ヒト体内で過塩素酸は甲状腺ホルモンを合成するためのヨウ素の摂取を妨げる力がある。メリットはあるが、普通の人が過塩素酸イオンを多く含む水を飲むと有害だ。なぜなら、人間の成長を抑制させるからだ。静岡大学の最新の研究で、イオンを除去する過程で、水が紫色になるとあった。これは色のみの違いなのか、銅イオンが水に溶けることで、水質も変わるのか疑問に思った。銀歯が原因で体調不良を起こしている人も少なくはないという論文が出ている。なので、金属イオンが溶けてヒトの体内に蓄積する為、有害である(水質にも変化が現れる)と推定した。
(名古屋国際高等学校 H.Y.)
錯体は、ガン細胞の増殖を抑えたり、二酸化炭素を減らすなど、有効に活用することで、社会の発展に大きく貢献する可能性を持っている。しかし、錯体の利用は全く問題がないというわけではない。
例えば、先ほど上げた、シスプラチンを使った抗がん剤には副作用があり、尿細管細胞を障害したり、神経などが傷つけられることがある。錯体は分子構造が複雑で取り扱いが難しいと考えられ、使い方を誤ると、人体に悪影響を及ぼす可能性がある。これらの難しい問題を解決するには近藤教授がおっしゃっていたように、諦めず、何度も試行錯誤を重ねることが大切である。
(清水東高等学校 T.N.)