2022年9月4日(日)基礎力養成コース第2回メインレクチャー、サブレクチャーを行いました。
2022年9月4日(日)は、オンライン形式で第2回のメインレクチャーとサブレクチャーを行いました。
メインレクチャーは、理学部物理学科の弓削達郎先生が担当しました。受講生は、あらかじめ静岡大学テレビジョンで公開されている動画「悪魔の物理学-情報熱力学入門-」を視聴しました。「全体が断熱されていて外から仕事がされない場合、熱は高温側から低温側に流れる」「断熱変化でエントロピーを減らすことは不可能」というのが、熱力学第二法則です。このことに疑問を持った科学者 J. C. Maxwell はひとつひとつの分子の姿を見分けられる小さな「悪魔」を考えつきます。
この悪魔は速く飛び回る分子と遅い分子を選り分けることができ、悪魔自身が仕事をせずに熱力学的エントロピーを減らすような変化を可能にしてしまいます。この悪魔がやっていることは分子の速さという情報を得、フィードバックをし、熱力学的エントロピーが小さな状態をつくることです。このとき悪魔はエントロピーを情報という形で獲得します。もし悪魔が断熱的に獲得した情報エントロピーの量が、熱力学的エントロピーの減少を補う大きさであれば、悪魔の仕業は実現し、情報は仕事に変換できるという理論です。果たしてそんな現象が実際に起こるのでしょうか。
オンラインの講座では、この動画の内容に関する質疑を行いました。受講生からは、「悪魔は、何を基準に分子を選り分けるのか」「悪魔によって選り分けられた分子は、その後どのように運動するのか」など、熱の移動というマクロな現象を分子の運動というミクロな視点で捉えた質問が出されました。受講生は、この講義を通して情報熱力学という新たな分野を垣間見ることができました。
サブレクチャーは、理学部生物科学科の石原顕紀先生が「知的財産権」というタイトルで講義を担当しました。この講義では、主に「特許権」「商標権」「著作権」の3つの権利が解説されました。知的財産とは発明や考案、商標、著作物などを指し、法律で保護されています。保護の目的は、知的成果の公開を促し、優れた創作を奨励することです。
「特許権」は、技術に関する高度な創作への権利です。出願、審査請求、審査、登録という複雑な手続きを経て権利化されます。講義では、iPS細胞や青色LEDの発明を例にとり、公的研究機関や民間企業が、どのような戦略で特許権を行使しているかが紹介されました。
「商標権」は、ある商品を他の商品と区別するために用いる名称やロゴなどを保護する権利です。商標登録がされた場合、同一もしくは類似した商品やサービスに対してこの権利が行使されます。
「著作権」は、文芸、学術、美術、音楽に関する著作物が制作されると同時に発生する権利で、出願や登録の必要がありません。誰かが他人の著作物を参考にして自分の作品を制作する場合は、著作権者から許諾を得ることが原則ですが、研究論文の場合は著作物を明示して引用することが許されています。
この講義では、研究機関・企業の科学者や技術者が研究や開発の成果を発表するときには、知的財産権に留意すべきであることを学びました。講義後の質疑では、受講生から「未成年による特許権等に関するライセンス契約が可能か」「出版社の大学入試問題集で引用される問題に著作権は発生するのか」など、高校生の視点から活発に質問がされました。
レクチャーの時間内で十分に回答しきれなかった質問に対しては、講座の終了後、コミュニケーションツールslackを使って、講師の弓削先生、石原先生から受講生にコメントが提示されました。