2023年5月28日(日)研究力養成コース第2回、ワークショップを行いました。
約1か月前の4月16日(日)、FSS受講生が「放任竹林問題」に取り組むため、静岡市環境共生課の協力の下、谷津山でのフィールドワークと講義を行いました。受講生は、1か月間をかけて「放任竹林問題」に関する課題解決の提案資料を作成し、5月28日(日)にコンクール形式で発表会を開きました。
まず前半は、当日の17名の参加者を3グループに分け、グループ予選を行いました。各グループには理学部の大学生、大学院生をTAとして配置し、発表会の進行と討議の活性化に協力してもらいました。
各グループのメンバーが一通りプレゼンを終えると、お互いの発表について質疑を行いました。発表資料の内容、プレゼンテーションの様子、質疑応答の内容を総合して各グループの代表を投票で選びました。
後半の本選では、各グループの代表者が全員の前でプレゼンテーションを行いました。この本選には、静岡市環境共生課の職員2名、静岡大学理学部生物科学科の徳岡徹准教授も参加しました。
発表順に、タイトルと内容を紹介します。
発表1「竹を最大限に活かす」
竹を竹箸、竹炭などの生活用品として活用後、二次利用として廃棄物を竹粉にして堆肥利用するなどの提案がなされた。バイオマスとしての利用が二酸化炭素排出削減につながることが述べられた。さらに、この提案を実現する上での資金や人的資源の課題が提示された。
発表2「竹酢液を用いた放置竹林解決策」
竹の活用方法の一つとして、木材保存剤の原料とすることが提案された。歴史的建造物の保存にも活用されている天然成分と竹との関連が述べられ、その有用性が強調された。提案の中では、対策に必要な資金の調達についても試算されていた。
発表3「孟宗ヨーグルトによる放置竹林問題と家畜の悪臭問題の解決」
竹粉を乳酸発酵させて得られる「孟宗ヨーグルト」を使って、畜産業が抱える課題の解決策が提案された。畜産業と周辺住民との関係改善、畜産生産物の品質改善、放任竹林の改善と地域環境を広い視野で見た提案がなされた。
発表4「竹から作る竹炭」
竹の資源としての活用方法として、竹炭が提案された。竹炭を燃料として使うだけでなく、多孔質であることを活かして消臭剤や調湿剤として有用であること、土壌汚染物質の吸着が可能であることが述べられた。
発表5「放任竹林という課題と解決策」
ボランティア活動のみによって放任竹林問題を解決することの限界が指摘された。そこで、ドローンを活用したセンシング、枝葉を刈り取るロボットの導入、竹の形状に対応した自動伐採機の開発など、竹林整備の自動化が提案された。
発表6「放任竹林問題の解決に向けて」
放任竹林の解決策として、竹が収入源となり製品の材料として継続的に採取し続けられる環境づくりが必要であることが指摘された。販売可能な製品として竹チップを用いた昆虫マットの商品化で、伐採から販売までの事業化が提案された。
発表7「放任竹林課題解決提案書」
ビニールハウス農業の増加を踏まえて、プラスチック材、金属材の代替として竹を利用したビニールハウスの普及が提案された。農家、園芸利用、教育利用をターゲットとし、竹職人の雇用や付加価値の高い商品化が考察されていた。
今回のプレゼンテーションでは、放任竹林問題の解決方法について、そのねらいやターゲット、メリットが述べられるだけに止まらず、さらに多角的な考察がなされました。その活動や事業化を誰が担うのか、対策のために必要な資金をどのように調達するのか、どのような価値を作り出すのか、継続するためにはどうしたらよいのかなどです。放任竹林の現場を、自分自身が体験し、そこに農業の問題、地方都市としての問題、担い手の問題など様々な社会現象が複雑に絡んでいることを理解した上での提案だったように思われます。
すべてのプレゼンテーションが終了した後、理学部生物科学科の徳岡徹先生から、専門の植物系統分類学の立場から竹という植物の解説が行われました。さらに、徳岡先生から受講生へ、次のような示唆に富んだコメントが伝えられました。
・どんな課題解決にも、その根拠となる基礎研究が重要である。
・竹を切るだけでなく、切った後をどうするのか。
・商業化ができたとき、現在の竹林を資源とみなして本当に良いのか。
・人間がどれだけ継続的に関わることができるのか。
・人間が手を加えるのをやめて、放置し続けるのも選択肢の一つではないか。
続けて、前回のフィールドワークを企画していただいた静岡市環境共生課の八木駿氏から、行政の立場に立って、次のような講評をしていただきました。「もし、事業化をするのなら、デメリットをしっかり考える必要があり、関係する人の立場に立つ必要がある。企業化するのであれば、生産者としての利益はあるのか、継続性やコストの面も検討が必要である。」
「放任竹林問題」の活動を通して、地域の課題解決のためには、科学的工学的に自由な発想と、実現可能性の両面を深く検討する必要性があることを、受講生たちは学ぶことができました。
すべてのプログラム終了後、参加者全員による投票で選ばれたベストプレゼン賞の2名が表彰されました。