「研究発表のオーサーシップ」の情報
2025/07/13(日)基礎力養成コース第1回講座のサブレクチャー「研究者倫理 〜 研究結果の取り扱いを中心に 〜」でも触れられた「研究発表のオーサーシップ」に関して簡単にまとめると下記のようになります。
研究発表のオーサーシップ(Authorship)とは、研究への貢献を認め、責任を負う権利・資格のことで、単なるクレジット(名誉)だけでなく、研究内容の正確性や倫理的責任も伴います。誰を著者(Author)とし、誰を謝辞(Acknowledgment)に入れるかは、研究の構想・分析・執筆への実質的な貢献度に基づき、ICMJE基準(国際医学雑誌編集者委員会の基準)などの国際的なガイドラインに従って判断され、不適切なオーサーシップ(ギフトオーサーシップ、ゴーストオーサーシップなど)は研究不正とみなされます。
オーサーシップの基本原則
・貢献度: 研究の構想、デザイン、データ取得・分析・解釈、論文の草稿執筆・改訂に「実質的に」貢献した人物が著者資格を持ちます。
・責任: 著者は発表内容の誤りや虚偽がないことを保証する責任を負います。
・決定のタイミング: 著者資格や順番は、研究開始前や早い段階で関係者間で合意するのが理想です。
不適切なオーサーシップの例
・ギフトオーサーシップ: 貢献していないにもかかわらず、指導教員や権威者を敬意から著者に入れること。
・ゴーストオーサーシップ: 貢献しているのに、名前が著者リストや謝辞から漏れること(メディカルライターなど)。
・ゲストオーサーシップ: 貢献度が低いのに、出版の可能性を高めるために有名な研究者を著者に入れること。
謝辞(Acknowledgment)との違い
著者の基準を満たさないが、研究に助言、場所提供、患者提供などで貢献した人物は、謝辞(Acknowledgment)で具体的に言及されます。
著者順位の決め方
・分野や研究グループによりますが、一般的に貢献度順(第一著者が最も貢献、最終著者が研究責任者など)が多いです。
・大規模研究では、全員が均等に貢献したと説明し、アルファベット順にすることもあります。
重要なポイント
・オーサーシップの判断は倫理的な問題であり、透明性が求められます。
・不明な点があれば、所属機関の倫理規程や学術雑誌の投稿規程を確認し、関係者間でよく話し合うことが重要です。
参考になる情報が「参考:研究への貢献の考え方」として第73回日本生態学会大会Webサイト(https://esj-meeting.net/home/)の「ジュニアポスター(旧・高校生ポスター)」参加者向けに提供されていましたので抜粋転載します。
【「https://esj-meeting.net/juniorposter/#参考:研究への貢献の考え方」から転載】
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参考:研究への貢献の考え方科学の分野では、研究成果の発表時にはオーサーシップと呼ばれる「誰がどのように研究に貢献したか」を明記するのが一般的です。これは、研究に関わった人々の役割を正しく伝えるための大切なルールです。
発表者(=ポスターや論文に名前が載る人)として認められるのは、次のような形で研究に貢献をした全ての人です。これらの貢献がある場合は、生徒のみでなく、顧問の先生や大学教員等外部の助言者も発表者に該当します。
・研究テーマの立案・計画
・実験・観察の実施、データの収集
・データの解析や統計処理
・結果の解釈や考察
・発表準備
・特殊な設備の提供や技術的・学術的な指導ジュニアポスターでは、各発表者がどのような役割を担ったかをポスターに明記することをルールとしています。発表者全員が、いずれかの項目に記載されるはずです。上記の貢献の分類はあくまで一例なので、研究実態に合わせて適宜変更して構いません。
いくつか具体的な例を見てみましょう。
例1:生徒A、生徒Bが研究テーマを立案し、顧問Xの助言を得て野外調査を実施。生徒C、生徒Dも野外調査に協力。
→ 4人の生徒と顧問教員の全員が発表者に該当= 貢献の表記の例 =
研究の構想:生徒A、生徒B、顧問X
データの収集:生徒A、生徒B、生徒C、生徒D
データの解析・考察・発表準備:生徒A、生徒B例2:生徒Aが研究テーマを構想し、大学教員Yの技術指導のもとで実験を実施。生徒B、生徒Cが実験を手伝い、生徒Dは統計解析を担当。結果の考察や発表準備には顧問Xも加わった。
→ 4人の生徒、顧問教員、大学教員の全員が発表者に該当= 貢献の表記の例 =
研究の構想・設計:生徒A
実験の実施:生徒A、生徒B、生徒C
統計解析:生徒D
結果の考察・発表準備:生徒A、生徒B、生徒C、生徒D、顧問教員X
技術的指導・設備提供:大学教員Y例3:生徒Aが研究テーマの設定から実験、考察、発表準備までを主体的に実施。顧問教員Xは部室の使用や機材の使用についての一般的なアドバイスを行った。
→ 生徒Aのみが発表者に該当。= 貢献の表記の例 =
研究の構想・設計、実験、考察、発表準備:生徒A例4:生徒Aが実験・データ収集を担当し、大学教員Yが一部の解析と助言を提供。顧問教員Xは大学訪問時に付き添った。
→ 生徒Aと大学教員Yが発表者に該当。= 貢献の表記の例 =
研究の構想・設計・実験・データ収集:生徒A
データ解析、結果の考察:生徒A、大学教員Yどの程度の「助言」や「手伝い」であれば発表者に含めるべきかに関しては、普遍的なルールはありません。ただ、一般的には「研究への知的貢献があるか」「研究の質に影響する貢献であるか」などが考慮されます。発表者に相当しないと判断される場合でも、「謝辞」として様々な支援や協力者への感謝の気持ちをポスター上に記載することもできます。
学会発表は、研究成果を伝えるだけでなく、自分たちの活動を客観的に評価する良い機会でもあります。研究成果にたどり着くまでにあった様々な周囲のサポートを振り返りながら、適切な発表者や謝辞への記載を議論・整理してみましょう。
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<参考>
日本学術振興会 研究倫理教育教材
日本学術振興会 研究倫理eラーニングコース (e-Learning Course on Research Ethics)[eL CoRE]
研究活動における不正行為等の防止の徹底について(文部科学省通知)
オーサーシップ Elsevier Researcher Academy
昆恵介「研究・発表における倫理」日本義肢装具学会誌 33(2): 127-134, 2017.