つなげる力を持った未来の科学者たち

 このスクールの正式名称は「つなげる力で世界に羽ばたけ 未来の科学者養成スクール」です。この「つなげる力」というのはどういうことを指すのでしょうか。

 つなげるという動詞は、何かと何かを結びつけるという動作を表します。一見、簡単そうに見えますが、多くの中から何かと何かを見つけ出し、それらを両手にとってじっとみる、そうしてどうにかして両者を結びつけて、ふたつがつながった形にする。この一連の動作を「つなぐ」または「つなげる」と言います。大変、複雑な行為です。そして、その動作を行うためには「力」がいる。つなげるものを見つけ出す力、手に取る力、両者を結びつける手段を考える力、そして実行する力です。その「力」なくして、つなげることはできません。

 つなげることで、なにか良いことはあるのでしょうか。突然で恐縮ですが、石器時代に行ったとします。あなたは、平たい石と棒切れを拾いました。この石と木の棒を結びつければ、斧と言う道具ができそうです。尖った石なら槍ができるでしょう。それらの道具を使えば、狩猟や開墾ができます。人類はそうやって自分たちの生活の場を切り開いてきたのではないでしょうか。

 ここで面白いと思うのは、石と木と言う異質のものどうしをつなげたことです。

 自然科学の世界でも、異なる研究分野の知識と知識を結びけることで、学際的で新しい研究分野が作られ、自然の理解が深まります。生物学と化学から生化学という分野が誕生し、生命のしくみの理解が飛躍的に進みました。天文学に物理学の考えを導入したことで、宇宙の広がりや起源が明らかになりつつあります。望遠鏡の発明から始まる工学の発展と相まって、宇宙研究のフロンティアは地球から太陽系へ、そしてその先へと広がっていくことでしょう。

 何かと何かをつなげる力は、新しい技術や知識を生み出すことの原動力です。

 何と何をつなげるか、どうやってつなげるか、つなげるとどうなるか。想像の翼を広げて、これまでにないことを見つけ出し、見た事もないものを作っていく。そういうことを、未来の科学者たちに期待します。

M.U.