未来の科学者の「教室」
私は絵本が好きです。子供向けに書かれた絵本には、心を癒す力もありますが、心を打つものもあります。「教室はまちがうところだ」(蒔田晋治 作・長谷川知子 絵,子どもの未来社,2004)はそんな絵本の一つです。
この詩は次のように始まります。
教室はまちがうところだ
みんなどしどし手をあげて
まちがった意見を 言おうじゃないか
まちがった答えを 言おうじゃないかまちがうことをおそれちゃいけない
まちがったものをわらっちゃいけない
まちがった意見を まちがった答えを
ああじゃないか こうじゃないかと
みんなで出しあい 言いあうなかでだ
ほんとのものを見つけていくのだ
そうしてみんなで伸びていくのだ
こどもの教室をイメージして書かれていますが、こどもを科学者に置き換えても成り立ちます。みなさんが学校で習うことは、過去におおくの科学者が明らかにした真理です。では、科学者たちはどうやって真理にたどり着いたのでしょうか。もちろん、最初から知っていたわけではありません。ああでもない、こうでもないと考え、試して結論をえて、真理だと思うことを発表する。でも、いろいろ試してみると、残念ながらそれは真理ではなかった。そこで別のひとは別の考え方や方法で試してみて、前のひととは別の結論を得て、自分が真理だと思うことを主張する。で、また誰かが同じことをする。そうやって、だんだん真理に近づいていく。そうして得られた真理は人類の宝物・財産になり、学校で次世代に伝えられます‥。
もし、まちがうことを恐れるあまり、考えたり、試したり、発表することを誰もしなかったら、真理は永遠に人類の手に入ることはないでしょう。まちがうからこそ真理にたどり着けるのです。まちがうことを恐れずに、「考え、試し、発表をする」。そんなことができる雰囲気を持つ環境こそが、科学者の理想の教室なのだと思います。
先ほどの詩の後半部分は次のようです。
まちがいだらけのぼくらの教室
おそれちゃいけない
わらっちゃいけない
安心して手をあげろ
安心してまちがえやまちがったってわらったり
ばかにしたりおこったり
そんなものはおりゃあせん
(後略)
未来の科学者養成スクールも、そんな雰囲気をそなえた教室にしていきたいと思います。基礎力養成コースのメインレクチャーでは、研究者の講義を聞いた後に、質問をしたり意見を発表する時間をたっぷりもうけてあります。数人のグループで意見を発表し合い、話し合うワークショップもあります。
受講生のみなさんには、どんどんまちがえて、「ほんとのものを見つけて」、「そうしてみんなで伸びて」くれることを願っています。
M.U.