自然科学の「仮説(モデル)の検証」について

 前回のコラム(「科学とは何かについて」 2018年11月18日掲載)で、「自然科学とは、誤りを正す仕組みが内包されている学問だ」という考えを書きました。それでは、誤りを正す仕組みとはどのようなものでしょうか。その仕組みが詳しく書いてある本を紹介したいと思います。「科学が進化する5つの条件」(市川惇信 著 2008年 岩波書店)です。

 下の図を見ながら読んでください。

図1.モデルの検証法(「科学が進化する5つの条件」中の図を基に作図)

 まず、ある現象の原因を推論して仮説を立てます。仮説のことを「モデル」といいます。モデルから演繹的推論により予測を立てます。モデルが「真」であればこうなるはずだという予測です。この予測を確認できる観測・実験を実行します。その結果を予測と比較して、合致していればモデルは「偽」ではなく「モデルは実証された」となりますが、一致しないときは「モデルは反証された」となり、「モデルは偽である」として、反例を取り込んで「新たなモデル」を作り、予測を立てます。モデル→予測→観測・実験の結果と予測の比較→真偽の判定という一連枠組みが「モデルの検証法」です。反証により、モデルの誤りが明らかになるのです。このことが、自然科学という知識に客観性と信頼性をもたらしています。

 反証が得られない場合は、そのモデルは「偽」ではないというだけで、モデルが正しいかどうかはわかりません(これは大変重要ですね!)。しかし、反例を取り込んでモデルを作り直し、それを何度も繰り返すと、新たな反例が出てこないまで極めたモデルができます。これが自然科学の「真理」だとされます。

 このように見ていきますと、自然科学というのは、モデルを作っては検証し、またそれを繰り返すという試行錯誤の連続で成り立っていることがわかります。科学の研究・真理の追究には、根気が必要だということが納得できます。

M.U.