研究が人の役に立つことの必要性

最近、とある動物言語学者(鈴木俊貴さん@東京大)が複数のテレビで取り上げられ、その番組の中で小鳥(シジュウカラ)の言語に関する研究を紹介しつつ、研究が人の役に立つ必要性についても考え方を紹介していました。

これらを見ていて、こんなことを考えてみました。

役に立つかどうかを、いったん忘れてみよう

私たちはよく「その研究は何の役に立つの?」と聞かれます。けれど、シジュウカラの“言語”の研究で知られる鈴木俊貴さんは、「何でもかんでも役に立つかを最初に考えると、研究がつまらなくなる」と話しています。これは、研究の本質をとてもよく表しています。

たとえばシジュウカラ。彼らは仲間に向けて「空の敵」「地上の敵」「集まれ」など意味のある声を使い分けていると分かってきました。しかし、この研究が始まったとき、「人の役に立つ」理由はありませんでした。ただ「なぜ彼らはこんな鳴き方をするのだろう?」という純粋な好奇心が出発点だったのです。

ところが、この“役に立つとは限らない”研究は、その後、人間の言語の進化を考える手がかりとして注目され、コミュニケーションの仕組みを理解するために多くの研究者が関心を寄せるようになりました。最初から「役に立つ研究をしよう」と考えていたら、そもそもこの面白い発見にはたどり着けなかったでしょう。

アマチュア研究者の卵である皆さんに伝えたいのは、「すぐ役に立つかどうか」を気にしすぎなくてよい、ということです。面白いと思ったことを、遠回りでも、失敗しても、追いかけてみてください。むしろ「何だか気になる」「もっと知りたい」という気持ちこそが、研究を続ける力になります。

役に立つ研究は、結果として生まれるものです。最初から役に立つことばかり考えると、視野が狭くなり、本来の好奇心がしぼんでしまいます。だからこそ、鈴木さんは「あえて役に立つなんて考えないで研究してほしい」と言うのです。

皆さんの“どうして?”は、未来の誰かの役に立つ宝物になるかもしれません。まずは、自由に、好きなことを探究してみませんか。

<参照情報>
・25/11/29(土)TBSテレビ「情報7daysニュースキャスター」https://www.tbs.co.jp/Ncas/
25/12/07(日)MBS毎日放送「情熱大陸」https://www.mbs.jp/jounetsu/2025/12_07.shtml
・鈴木俊貴さん@東京大 研究者一覧@東京大学先端科学技術研究センター鈴木研究室
・TBS CROSS DIG with Bloomberg
 【鳥の言葉が分かる“天才”東大准教授】動物言語学者・鈴木俊貴(約40分)
 https://www.youtube.com/watch?v=SA1YjowprWE
・ナレッジキャピタル / Knowledge Capital
 鈴木 俊貴/ 受賞者プレゼンテーション World OMOSIROI Award 10th.(約33分)
 https://www.youtube.com/watch?v=a-7xz2HlHk4
・ほぼ日の學校
【シジュウカラの言葉がわかる「動物言語学者」って?】鈴木俊貴さん(約33分)
 https://www.youtube.com/watch?v=gi-HQtOt34Q