2023年10月初旬、基礎力養成コース第6回メインレクチャー、サブレクチャーをオンデマンドで行いました。

第6回のメインレクチャー、サブレクチャーはオンデマンドの形式で行いました。2023年9月30日(土)から10月15日(日)の期間に、受講生は指定された講義の動画を視聴します。受講者自身が予定を調整しながら講義動画を視聴し、レポート作成に取り組みました。

メインレクチャーは、理学部附属放射科学教育研究推進センターの近田拓未先生が行った「海水から太陽をつくる〜核融合炉が拓く未来〜」というタイトルの講義です。

 核融合炉は、国際的な協力のもとに開発されつつある発電方法です。現在、人類はエネルギー(Energy)問題、環境(Environment)問題、経済(Economy)問題の3Eのトリレンマを抱えています。また日本は、化石燃料などエネルギー資源の90%を海外からの輸入に頼っています。持続可能なエネルギー利用方法として、再生可能エネルギーの開発などが試みられていますが、エネルギー資源の獲得には広大な施設が必要となります。そこで、3Eのトリレンマを解決する有効な方法として核融合炉に期待が集まっています。

 核融合炉は、水素の同位体である重水素と三重水素の原子核どうしが衝突することで発生する大きなエネルギーを発電に用いるものです。核融合炉がうまく稼働すれば炉内で原料となる三重水素を再生産し、自給自足の体制を作ることができると考えられています。

 しかし核融合炉開発では、解決しなければならない技術的課題があります。核融合反応が起こるためには、原子を高温にあたためてプラズマをたくさんつくり、それらを小さな空間に閉じ込める必要があります。プラズマを閉じ込める方法として、磁場を用いる装置などが試作されています。また、核融合で発生した大きなエネルギーの中性子を冷却材で熱に変換する装置をブランケットと言い、これには中性子の衝突と高温に耐え、同時に中性子を遮蔽する素材が必要となります。

 現在、国際的な協力体制の下で核融合炉の実用化に向け、国際熱核融合炉(ITER)がフランスに建設されています。あと数年後に核融合の実験が始まる予定ですが、ここでの研究成果は各国の核融合炉開発に反映され、日本も21世紀中ごろに核融合炉を用いた発電の実用化を目指しています。

 受講生が講義後作成したレポートでは、高エネルギーの水素の原子核や中性子に晒される装置に使う素材開発の重要性が述べられていました。また、現在注目を集めている水素エネルギーなど、他のエネルギー資源との比較も行われていました。さらに世界のエネルギー問題に対する国際協力の重要性を訴える意見も多く見られました。

サブレクチャーの「統計学 その1」では、静岡大学の教養科目として動画が作成された「数理・データサイエンス入門」の一部を視聴しました。科学の研究では、実験や観察を通して多くのデータを収集することになります。このサブレクチャーを通して、集められたデータが有する性質を見極めること、データの代表値を分析すること、グラフなどを用いて可視化することを学んでいきます。

 「尺度水準」の項目では、データを質的データと量的データに分類することを学びます。質的データの中には、名義尺度と順序尺度という尺度水準があります。また、量的データの中には、間隔尺度と比率尺度があります。実験や調査で得るデータが、どの尺度水準に分類されるかを見極めることが必要であり、この項目ではその方法を学びます。

 「代表値」の項目では、データの全体的な傾向から大きく離れた外れ値の見分け方を学びます。操作ミスや記録ミスで起こる異常値は、四分位偏差を用いると、外れ値として機械的に検出できます。

 「データの可視化」では、データの特徴を可視化するためのグラフの表し方を学びます。
例えば、箱ひげ図は平均点、中央値、最大値、最小値、第1四分位点、第3四分位点という多くの情報を同時に表すことができます。一方、箱ひげ図はデータの散らばり具合を細かく表現できないため、データの分布密度を表すことができるバイオリンプロットも有用です。またグラフを描く時には、見やすさにも心がける必要があります。軸や目盛りの長さ、太さ、色、文字の大きさ、フォントなど、見やすいものを選んで使うようにします。さらに、データがもたらす情報を誤解されないように、縦軸、横軸が何を示しているか、単位は何か、図中の線や記号が何を示しているかなどを明示していくことが大切です。

 受講生は、全部で7本の動画を視聴したうえで、振り返りフォーム中の小テストを受けました。多くの受講生が満点をとる成績でした。