2023年11月初旬、基礎力養成コース第8回メインレクチャー、サブレクチャーをオンデマンドで行いました。

第8回のメインレクチャー、サブレクチャーはオンデマンドの形式で行いました。2023年10月28日(土)から11月12日(日)の期間に、受講生は指定された講義の動画を予定を調整しながら視聴し、レポート作成に取り組みました。

メインレクチャーは、理学部地球科学科の三井雄太先生が担当しました。受講生は、あらかじめ静岡大学テレビジョンで公開されている動画「プレート境界地震の発生メカニズム-2011年東北地震後の進展-」を視聴しました。

地震学では、1920年代以降地震波を測定し解析することで地震が起こる仕組みを探ってきました。その結果、現在では常識のように捉えられている「地下の断層のずれから地震波が放射されたものが地震の正体である」ことが1963年に確定しました。これを境に、地震という現象の力学的な仕組みが明らかになっていきます。地震のメカニズムは、断層の破壊開始、破壊の伝播、破壊の停止という3つの過程に分けて捉えることができます。この中で、断層のずれ(せん断破壊)が、既にある断層をなぞるように高速で伝わるのが破壊の伝播です。さらに、破壊の伝播が地下の高温部分で岩石が少し柔らかくなったところで停止することも分かってきました。このように地震のメカニズムが少しずつ解明されてきたものの、断層の高速破壊が始まる前、つまり地震が発生する前にどんな現象が見られるかは、現在でも地震学の大きな論点です。「断層内流体」「ゆっくり変形」という物理過程については、2011年東北地震の後に進展が見られた研究でした。

受講生のレポートからは、地震のメカニズムを解き明かす研究方法に高い関心を持ったことが読み取れました。繰り返し行う実験で再現性を検証する研究とは異なり、地震研究では稀に起こる自然現象の痕跡を掘り起こしていく必要があります。地球上の同じ場所でも全く同じ現象は起こらない中で、地震の仕組みを探り出す研究の難しさを感じ取ったようでした。一方で、地震を通して知る地球という惑星の活動から、他の天体の活動を予測できないかという視点を獲得した受講生もいました。また、第1回目の基礎力講座メインレクチャー「自然災害は自然現象か」を元に、防災という観点で地震研究の現状を考察したレポートも多く見られました。

「統計学 その2 群間の比較」のサブレクチャーでは、静岡大学の公開講座として収録されている「数理・データサイエンス入門」を視聴しました。

 様々な統計調査において、母集団の一部を抽出して得た標本をもとに、母集団を推定する手法が用いられます。これを標本調査と言い、世論調査や不良品の検査など社会科学や科学技術で用いられ、調査方法を適切に管理すれば確率的に母集団を推定できる方法です。

 しかし、標本という見える世界の情報から、母集団という見えない世界の性質について判断を下すためには、適切な手順を踏む必要があります。複数の母集団間に差があるかどうかを判断するために、仮説検定という手法で標本を検定します。その結果、標本間に有意差があると母集団間にも差がある可能性があるという結論になります。ただ、このような統計処理にも、100%正しい判断は不可能であることを自覚する必要があります。

 実際のデータ分析はコンピューターを用いて行われるため、コンピューターが処理しやすい形式のデータに前処理する必要があります。表データでは、データ形式を整形します。また外れ値や欠損値を適切に処理します。このような前処理をすることで分析精度を高めることができます。

 研究者や場所や時代が変わっても同じ結果が得られるよう再現性を追求することで、研究から恣意的な歪を取り除くことが大切です。特に、仮説に都合の良いひとつかみのデータである「チャンピオンデータ」を、実験結果の中から採用することは避けなければいけません。そのためには、データの分布状況について適切な統計処理をもとにして判断することと、自らの研究倫理意識が重要になります。

 サブレクチャー受講後、受講生はGoogle Classroomのシステムから小テストを受けました。いずれの受講生も高得点であり、理解度の高さを確認することができました。