2018年のFSS活動を振り返って

 去年今年 貫く棒の 如きもの  高浜虚子
  (「六百五十句」所収)

 俳句界の巨星、高浜虚子 のこの俳句は、古い年が去り新しい年が来る、その時期(去年今年)に詠んだものです。歳は変わるけれど、人の営みには変わらぬものがある。それは棒のように確かなものではないか。例えると一本の長い棒と言い換えることができる、そんな揺るぎないもの、確固としたものではないか。それが人類の過去、現在、未来を連綿と貫いているのではないか。行く年と来る年が重なる時期を迎えるたび、この句を思い出しては、このような解釈に浸っています。

 さて、もうすぐ平成30年が終わります。皆さんにとって今年はどんな年だったでしょうか。これは良い経験だった、大変有意義な体験だったというリストの中に、もし、FSSでの活動が入っていれば、運営に携わる者の一人として嬉しいこと限りなしなのですが…。

 年が改まるこの時期、今年のFSSの活動を振り返ってみます。まず3月に第1期生42名の研究発表会と修了式を行いました。1年目から優れた成果を創出してくれたことは望外の喜びでした。7月には第2期生42名を迎えての入校式と基礎力養成コースの開始。台風12号接近のため日程と内容を一部変更しての実施でした。8月には発展コース生4名をタイに派遣、正味3日間の海外研修でしたが、内容は盛りだくさん。10月はグローバルサイエンスキャンパス全国受講生研究発表会で発展コース生4名による3件の発表、うち1件が文部科学大臣賞受賞の快挙。12月はタイの高校生4名との研究・文化の交流会を通した国際交流が実現。初めてのイベントも多かったけれど、すべて無事終わりました。
 
 上述の俳句をFSSに引きつけると、次世代の科学人材の育成という目的とそれを実現するための方針と教育プログラム。それが一本の長い棒。その棒は昨年、今年、来年、再来年を確かに貫いている。年が変わるごとに、棒それ自体は変わらないけれど、棒の太さ、色つや、手触りなどはその時その時にあったものへと少しずつ変化していく。FSSの事業は順風満帆のように見える一方で、外部評価委員会やJSTによる評価などを通して課題が浮き上がってきました。この課題の解決に向けた改善策を打ち、バージョンアップしたFSSを来年は実施していきたいと思います。

M.U.